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金融大崩壊 「アメリカ金融帝国」の終焉 / 水野和夫

2009/02/15 Sun [Edit]

筆者は三菱UFJ証券参与・チーフエコノミスト。この人の前著「人々はなぜグローバル経済の本質を見誤るのか」(2006)を読んでわりと面白かったので今作も新書だし買ってみました。
昨年から大変なことになっている世界金融経済の問題についての理解の一助とするため。

歴史的な流れはわかりやすく面白く読めたが、最後の「日本が生き残る道」の中の提案は首をかしげるものもあった。特に「円高」のほうが良いというのは解せない。確かに輸出立国からの脱却と中小企業も世界に出て行かなくてはならないという主張は判るが、今すぐに転換するのは無理があるし、現在の円高容認は政策的にも失敗だと思う。この辺はいろんな方面からのいろんな意見があるところだろうけど。

本書の結論:16世紀に資本主義が始まって以来の地殻変動が起きていて、サブプライムローン問題はちょうどその中間点。まだこの後20年、30年激動の時代が続く。

第一章 アメリカ発世界金融危機

2008年3月 業界第5位ベアースターンズ 資金繰悪化→J・P・モルガン・チェースによる救済合併+NY連銀も資金援助

2008年7月 政府住宅金融機関 ファニーメイ、フレディマックの危機→米住宅公社支援法成立→公的資金注入

2008年9月15日 リーマン・ショック
アメリカ投資銀行 業界第4位 リーマンブラザーズの倒産→アメリカの危機管理能力に世界が疑問符
2008年9月17日 FRBはNY連銀がAIGに850億ドル融資することを承認。
2008年9月29日 米金融安定化法 下院で否決
     10月3日    〃       下院で可決
     10月10日 ワシントンでG7開催
     10月14日 米政府、主要金融機関9社への公的資金注入を発表

米金融帝国を代表する5大投資銀行がすべてなくなる。
第1位、2位のゴールドマン・サックスとモルガン・スタンレーは商業銀行に転換。3位のメリル・リンチはバンカメに買収される。

アメリカの金融危機に対する危機管理能力がないことが明らかになり、世界中の株価が乱高下しながらもついに暴落。

サブプライムローン問題は
リーマン・ショックまでが第一段階
金融の再編が進んでいる今の状態が第二段階
次の第三段階は実体経済への影響が本格化

第二章 危機の震源、サブプライムローン問題とは何か

1995年 クリントン政権 ロバートルービン財務長官 →「強いドル政策」
実物経済から金融経済への転換点

世界の金融資産=世界の株式時価総額+世界の債券発行残高+世界の預金(マネーサプライ)
1995年 63兆9000億ドル
2007年 187兆2000億ドル←ピーク
2008年11月 165兆8000億ドル←株価の下落で減少
金融資産はこの間100兆ドル(≒1京円)増えた。

世界の実物資産=世界の名目GDP
1995年 29兆5000億ドル
2008年 60兆1000億ドル

金融経済と実物経済の比率
1995年 2.17
2007年 3.45
2008年 2.78
金融経済が実物経済を圧倒するようになってきた。

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16世紀に誕生して以来、資本主義は「資本」「国家」「国民」の三者の利害が根本のところで一致してきた。
サブプライムローン問題は、資本が国家と国民に対して離縁状を叩きつけた象徴的な出来事。

1996年から富裕層(スーパープライム)の住宅ブーム=高級住宅地の値上がり→中産階級(プライム)への販売拡大→低所得層(サブプライム)への販売拡大(サブプライムローンの証券化)
市場原理主義に基づく利潤極大化の実現→バブルへの道
基本的には日本のバブルと同じ。違うのは日本は一国内でのバブルであったが、サブプライムローンは証券化されて世界中にばら撒かれた。

米住宅ローン残高10兆ドル、サブプライムローン残高1兆3000億ドルで13%程度。
しかし、この問題は近代資本主義の主役であった中産階級の没落であるという点で象徴的。

「住宅ローンの証券化」
住宅ローン→レンダー(小規模貸し手)→大手レンダー→投資銀行→MBS(住宅ローン担保証券)←格付け機関の格付け→投資家
または
住宅ローン→レンダー(小規模貸し手)→大手レンダー→ファニーメイ、フレディマック→MBS(住宅ローン担保証券)→投資家

サブプライムは信用度低いが他の格付けが異なる債権と組み合わせてリスクを細分化→CDO(債務担保証券)=格付けがトリプルAになるように組み合わせる→世界中の機関投資家へ販売

さらにもうひとつの仕掛けCDS
CDO(債務担保証券)はリスクが理解しにくい為保険をつける=保険料を払ってリスクヘッジ=CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)
CDSは1994年に開発され急速に普及、2007年残高62兆ドル。
住宅ローンが焦げ付き始め問題が拡大
保険会社が破綻すればリスクヘッジ出来ず、連鎖的に金融システムが破綻する=AIGの救済

第3章「アメリカ金融帝国」はなぜ生まれたのか

資本主義の成立=16〜17世紀 企業の収益=国家の利益
フランス革命→資本-国家-国民 三位一体の関係成立→「大きな政府」の「大きな物語」が「国民の幸福」
1968年「近代」への叛旗 パリ5月革命 ベトナム反戦 プラハの春 資本主義、共産主義双方の陣営で権威への反乱
1971年 「ニクソンショック」金ドル交換停止 「大きな政府」「大きな物語」の終わりの始まり
1973年 オイルショック スタグフレーション 不況とインフレの同時進行
1974年 「近代」のピーク 世界の長期金利=企業の利潤率のピーク
これ以降企業の利潤率は上がらなくなった
実物投資から金融投資への以移行
新自由主義の台頭=福祉国家をやめて労働分配率下げる
レーガノミックス(1980年代)

金融のグローバル化→技術革新=電子取引 IT革命
会計基準の世界共通化=時価会計システム

強いドル政策→世界中から対米直接投資の急増→「マネー集中一括管理システム」による「アメリカ金融帝国」の完成→金融市場=株式、債券のキャピタルゲインでリターンをあげていくシステムが確立

銀行の自己資本比率に関する国際統一基準(現在では各国の法律による)=自己資本比率8%以上=自己資本の12.5倍まで運用できる
アメリカの投資銀行はこの自己資本比率は適用されないので30〜40倍のレバレッジをかけて運用していた
また本体と連結決算しなくてよい運用子会社(投資ビークルSIV)をつくって運用

アメリカに流入する資金 1994年以前GDPの2.4% 1995年〜2007年はGDPの8.3%
90年代後半から投資銀行の全盛時代で金融資産は100倍=100兆ドル増えた
日本は戦後60年で個人金融資産を1500兆円増やした
期間にして5分の一、金額6倍、日本の30倍のスピード

日本は「大きな物語」の最大の成功例
しかし金融立国には失敗→政策の失敗
日本の金融資産 
1964年 15兆9000億円
  ↓ 「大きな物語」の成功    
1995年 1180兆円
  ↓ 金融立国の失敗
2008年 1504兆円
世界的には1995〜2008年で金融資産は1京円増加 日本は極端に少ない

1997年から日本は超低金利時代=「21世紀の利子率革命」
海外投資家の円キャリートレード→アメリカの金融資産増加に利用された

第4章 世界は不況からいつ脱出できるのか

サブプライムローン問題は
リーマン・ショックまでが第一段階
金融の再編が進んでいる今の状態が第二段階
次の第三段階は実体経済への影響が本格化→再編の象徴は米自動車業界

不良債権の規模がまだ確定していない→見通しが不透明
住宅価格がいつ下げ止まるか
実質住宅価格と過去の循環的変動を除去した趨勢的ライン=傾向線からの乖離率を見て判断→あと3年は余震が続く

米の家計規模
可処分所得10兆2000億ドル
2007年末 過剰債務 3兆8000億ドル うち 不良債権1兆3000億ドル
残り2兆5000億ドルをアメリカ国民が消費を落としながら返済しなければならない→最低5年間は実体経済が不況

第5章 「アメリカ金融帝国」終焉後の世界

「アメリカ金融帝国」のもとで金融資産は膨張を重ね、実体経済を振り回すようになってきた。
1995年以降は金融資産の下落が実体経済の不況を招くようになってきた。=経済の常識が翻されるようになった。「金融経済は実物経済に従属する」「インフレはすべての怪我を癒す」「貯蓄率が高い国ほど成長率が高い」etc.

強いドルの終焉=ドル機軸体制の終わり
アメリカ国債発行額 2004年以降 年平均4000億ドル 購入者94%が外国人
アメリカ財政赤字 2008年度 4548億ドル
2009年度1兆ドルを超える可能性
国債増発5500億ドル 国内で買えるのは2000億ドル程度 残り3500億ドルは外国頼み→ドルの下落 ドル防衛策のために各国政府は米国債を買う羽目になる
結局、中国、中東、日本が出資に応じることになる→たとえ成功してもドル基軸通貨体制の終わり

100兆ドル増えた金融資産は何処へ向かうか

第一候補 BRICs 実物投資
第二候補 脱石化エネルギーへの投資

今後の世界は新興国が経済を牽引
政治力については不透明→無極化の世界?
多極化であればアメリカ、EU、中国でのバランス

次のリーダーの可能性が高いのはEU=政治的にも安定
トルコがEUに加われば中東諸国との関係も近くなり資源獲得も容易に→ただしすぐには無理か

政府系ファンド(SWF)(中東、中国など)もすでに金融経済から実物経済への移行を視野に動いている

第6章 日本経済の生き残る道はどこか

日本は「日本輸出株式会社」
アメリカの危機は日本の危機
株価の比較→なぜダウ平均よりも日経平均のほうが下落率が大きいのか
東京株式市場では外国人投資家6割前後
ドル建て換算ではダウ平均とほぼ同じ動き→グローバルな投資家はドル建て利益で投資
日本輸出株式会社はアメリカ投資銀行株式会社と連結会社とみなされている
日本の政治家は危機意識がない

2008年10月28日 日経平均は1982年10月以来の安値水準を記録
現在の株価は50年移動平均線を下回っている
前回下回ったのは2002年10月〜2003年6月まで
最大乖離率13.9%(2003年4月)
2008年10月乖離率14.1% →マーケットは今回の金融危機は戦後最大の危機という認識

日本輸出株式会社に最大の転換点
欧米からアジアに輸出を分散していてもいままでは最終購入者はアメリカ
今後は新興国の中産階級 実体経済の成長にともなってGDPが伸びていくところがターゲット
30億人の一人当たりGDPが1000ドルから10000ドルになっていく地域と一体化することが真のグローバル化

ただし、前哨戦で日本は負けている→欧米企業は金融資産100兆ドルをまだ持っている→企業買収などの潤沢な資金
日本企業は技術力で挑むしかない
これからは「日本新興国向け企業株式会社」になる

財政出動はもう効かない
公共投資を積極的におこなうなどのケインズ主義に戻ってはいけない

日本の生産年齢人口 1995年に減少し始め、2005年には総人口も減少に
企業規模の大小を問わず、国内だけではジリ貧→海外とどうやってつながっていくかが鍵

政府がやるべきこと
人々の将来に対する不安を取り除くこと
年金制度改革、社会保障、教育 これらに集中すべき
中小企業支援 海外に出て行くための支援

本当のグローバル化 製品の規格づくり 海外の様々な最終メーカーからの要望があるので共通の規格が必要
自由貿易協定の拡大
日本が早急に取るべき政策は円高
食料自給率を上げる取り組みを始める
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